約 5,047,312 件
https://w.atwiki.jp/gugu/pages/5.html
Gugu鯖の攻略WIKIです 右にあるメニューからどうぞ
https://w.atwiki.jp/yamiorica/pages/784.html
熾烈神姫(しれつしんき)/Fierce Maidens 概要 2021年12月26日にカテゴリ化された「熾烈神姫」と名のついたカード群。 属するモンスターは全て天使族・炎属性で統一されている。 墓地・除外を利用しつつモンスターを攻撃表示で特殊召喚しながら、融合召喚をしてビートダウン・コントロールを行う。 名前と画像の元ネタはゲーム『神姫project』。 カード一覧 効果モンスター レベル6 《熾烈神姫-エリゴス》 《熾烈神姫-アルゴス》 レベル5 《熾烈神姫-メフィストフェレス》 《熾烈神姫-ベルゼブブ》 レベル4 《熾烈神姫-パールヴァティー》 《熾烈神姫-ネルガル》 《熾烈神姫-ブリュンヒルデ》 レベル3 《熾烈神姫-アテン》 融合モンスター レベル10 《熾烈神姫-ファフニール・オルフラム》 レベル9 《熾烈神姫-アルゴス・ビウィッチ》 レベル8 《熾烈神姫-ネルガル・インフレイム》 レベル6 《熾烈神姫-ネルガル・フォース》 魔法カード 通常魔法 《熾烈神姫のフレイムバースト》 《熾烈神姫のフレイムブレイド》 永続魔法 《熾烈神姫のフレイムシップ》 関連リンク tron インフレイム オルフラム 魔導神姫 コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1463.html
樹海の如く、業の深き竜(中編) “博士”とシレイが呼んだオーナーはその名にふさわしく、白衣と眼鏡を 身につけた青年だった……少々浮いているが、アキバでそんな人間は凡そ 珍しい物ではない。好意的に無視してやる。で、問題はクララ達の方だ。 「ち、小手先の業が効かねぇ……力押しだ!“レイキ”、“ホオウ”!」 「……レインディアバスターをアーマーに直して、支援メカが変形?」 『大型のぷちマスィーンズとも言うべき連中だろう、気を付けろ!』 “リュウ”と呼ばれていたビット入りのコンテナが変形して、着陸用の スキッドと隠し腕で四肢を形成する。同時に首と尾が展開して、一匹の “亀”が姿を現した。一方の“キリン”と呼ばれたトナカイもどきは、 四肢を折り畳み、その上で首・尾と翼を展開させ“鳳凰”の姿になる。 そしてそれらを率いるシレイは、ツガル型本来のアーマー姿に変じた。 「一気に、せめるぜぇぇえっ!!!野郎共、続けぇぇぇえっ!!」 『ク、クルッ!?』 「怯まないでリンドルム。ボクと君がいれば、負けないから」 『クルル……クルッ!』 「そう……君を信じるボクを信じて、リンドルム」 「へん、あちらさんも変形機構付きかッ!面白ぇッ!!」 それを見届けたクララは、リンドルムを“ゴーレム・シルエット”へと 変形させる。躯のブロック構造を活かし、クララの全身を包み込む様に 歪な人型へと変形したリンドルムの両腕は、一見して普通の腕だった。 だが腕表面に見えるダイナモに、シレイは当初気付かなかった様だな。 「フィィイバァァァァアッ!!!!」 「ッ。神姫と、飛行メカ・水陸両用メカによる立体的な砲火……かな」 『有無。“ホオウ”とやらが背面に回り込む、気を付けろクララ!』 私の警告にクララ……の入った人型……は肯いて、その腕で印を組んだ。 それと同時に腕のダイナモは急激な旋回を開始する。電磁パルスの加速・ 整流・集束化機能を司る輪転機“クルセイド・スペル”が起動したのだ! クララが弾幕を避けつつ腕を振るえば、そこに現れるは十数本の光剣ッ! 「彼方の城より疾く来たれ剣王の宝具よ、超越せし力を顕現せよッ!」 「なんだありゃ?剣型のぷちか?……いや、エネルギーレベルが違う!」 「そう。“呪法錬成宝剣群”──“スペリオル・イグナイト”だもん」 「チッ、よくわかんねぇけど……楽しませてくれそうじゃねぇか!」 そこからは、正に凄絶の一語であった。同型……ハウリンタイプの平均に 若干劣る身体能力を“ゴーレム”で補ったクララは、幾多の光剣を巧みに 操りながら、三次元的に襲い来る弾丸やレーザーを避け、刃で弾き返す。 一方のシレイも複雑怪奇だろう火器制御をこなし、クララを追いつめる! 「にゃろ、しぶといじゃねぇか……とっととくたばれ木偶人形ッ!!」 『クルル……!』 「分かってるもん、手数では圧倒的に不利……肉薄するよ、リンドルム」 『クル……!?……クルルッ!!』 飛来する“レイキ”と“ホオウ”のレーザーや実体弾を弾き返すたびに、 産み出した光の剣は一本、また一本と砕けてはエネルギーを撒き散らす。 それが煙幕の代用となってはいた物の、情勢は徐々に不利となっていた。 そこでクララはまたしても、彼女らしい思いがけぬ奇策を繰り出す。即ち 最も防御が分厚いであろう亀型支援マシン“レイキ”への突撃だった!! 「ははっ!手が届くからって一番カタい奴を倒しに行くか?!」 「……倒そうなんて、初めから思っていないんだよ?」 『クルルゥゥッ!!!』 「な……通り過ぎ、って違ぇ!ワイヤーを引っかけて、飛んで来た!?」 「油断大敵、なんだよ……ふっ!!」 「ぐあぁぁぁっ!!痛てぇ……てめぇぇえっ!!」 見るからに重装甲な“レイキ”から潰すのかと、シレイは侮っていた。 だが、クララの狙いは巨大亀を足場代わりにする事だったのだ。しかも クララは、亀の首に“ゴーレム”後部のワイヤーブレードを引っかけて 急旋回、その勢いで上空に自らを飛ばし、シレイを光剣で斬り付けた! 電磁系の“魔術”が込められた光剣の一撃で、またも彼女は失速する。 「……まだ、倒れない。しぶといんだよ、シレイさん」 「あったりめぇだ!俺ァ、博士の力を証明しなきゃならねぇ!」 「お互い、想いは同じ方向……って事なのかな?」 「分かってりゃ話は早ぇ、これから全力でブッ潰すぜ!!」 だがツガルタイプ由来の飛行能力で彼女は着水を免れ、“レイキ”の元へ 移動する。その上空には、旋回して“ホオウ”が戻ってきていた。ここで 私は、漸く気付いたのだ。この三人に存在する、“謎のジョイント”に! まさかこのシレイと支援メカは……私は慌てて、クララに危機を伝える。 「クララ、警戒しろ!シレイは、サポートメカと合体する気だッ!!」 「合体?……ボクらの様に、神姫をコアにした戦闘モジュール型かな?」 「これを使うのは初めてだぜ……“瑞獣王”形態をなッ!!」 「!?……亀が下半身、鳳凰が上半身になって……人型に合体?!」 『キュ、キュイィィッ!?』 それは、名称とは程遠い不気味な異様だった。オレンジと赤・黒を下地に していた二基のサポートメカは上下に合体、“翼の生えた鬼の武将”とも 形容すべき異形へと変形する。更に、その腹部へとシレイが飛び込んで、 背中の独自ジョイントと手持ちのブレードを、サポートメカに接続した。 彼女を呑み込んだ腹部がシャッターで閉じられ、鬼の眼に光が灯る……! 「さっきは妙な技でやってくれたじゃねぇか、こいつは……」 『クルゥゥウ……ッ!?』 「いけない、あの光球は……避けるんだよっ!!」 鳳凰の尻尾から変形したと思しき鬼の手に、ドス黒い光の球が産まれる。 恐らくは、プラズマキャノンなのだろうが……両手を掲げて闇を呼び込む その見た目は“魔術”にも通じる物がある、禍々しい技と言えた。しかも 眼鏡を通して観測するだけでも、凄まじい威力を秘めている……危険だ! 「……お返しだぁぁあッ!!!」 「きゃ、あああああっ!?」 『クルァァァ!?』 『く、クララっ!クララっ!?』 ──────これぞ災い転じて福と成す、の象徴だね。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/nijishinki/pages/13.html
まおちゃお団秘密基地? << まおちゃお団秘密基地 >> このページはまおちゃおだんのひみつきちとなったのだ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1027.html
約束されし、王妃の宝剣(中編) 力を“受け流す”という策を用い、見事“隻腕”の一撃を逃れたアルマ。 だが、この一瞬生き延びただけではいかん。見事反撃を加えて、勝たねば 真に彼女を乗り越えたと言えない。現に腰のエルテリアは、まだ動かぬ。 魔剣もまた、アルマの真髄を見極めようとしている所なのだろう。有無。 「なかなか考えたな……だが、それだけで勝てると思うかッ!」 「ッ……!?そこっ、く……そうですね、守勢に回っていては負けます」 「それに、完全にノーダメージという訳でもない様だ……ならば!」 「なっ……ふっ。せあっ!れ、連撃?!……くっ!」 「推して参るのみ。どこまで耐えきれるか!」 ぱっと見では防戦一方のアルマ。前の様な致命傷は一つも喰らわない。 だが、僅かずつながら拳の衝撃がレーラズ等の装甲を抜けて、アルマに 疲労を与え始めている。このままでは、ジャッジシステムに見放されて 判定負け……となってしまうだろう。アルマも分かっているのか、剣を 返して反撃の突きを繰り出す!昨晩の特訓は、これだったのだ。だが! 「ッ!?……なるほど、こうして一突きで仕留めようと言うのか」 「頬を、掠っただけ……くっ!?」 「生憎と、そんな一撃だけではサードとは言え……私を倒せぬぞ!」 「うぁっ!?……ですが最後まで諦めませんよ、あたしは」 「そうか。だが、肝心な弱点に気付いていない様だな……ッ!!」 アルマの突きを避けて距離を取ったティールが、再び突っ込んでくる。 対するアルマは、受け流しの構えを取って備えるが……予想は外れた。 繰り出されたのは豪拳ではなく、抉る様な下からの蹴りだったのだ!! 「きゃうっ!?し、しまった……ヨルムンガルドが!」 「その剣は、軽すぎるのだ」 「そこまで読んでいたか……サードにこれ程の神姫が居るとは!」 ティールの言う通り、強化セラミックと軽量化フレームで作成してある “ヨルムンガルド”は、金属系マテリアルの同種ブレードよりも軽い。 それは合体による重量増加と取り回し・更には加熱溶断攻撃を見越して 最初から意図していたのだが……単独では、その軽さが仇となったか。 蹴りの威力は拳よりも低かった物の、黒刃は跳ね上げられて宙に舞う。 「くっ!でも、まだあたしには剣がありますよ!?」 「……ああ。だが……手で抜いていて私の速度に追いつけるかっ!?」 「きゃあああっ!!?」 「アルマお姉ちゃんッ!?」 ロッテとクララの悲鳴が、耳の側で響く。次の剣を抜こうとしたアルマが 更なるティールの蹴りに襲われ、三本目を取り落としてしまったのだッ! その複雑な使用法故に、刀身は鞘からアルマの意志信号で射出されその後 彼女の手の中でジャグリングの様に操作し、合体させる形式を採用した。 だがその機構があってなお、ティールに追いつけぬ時間のロスが生じる! 「四本、五本……六本!さぁ、これで残るは……腰の剣のみか」 「まだ……あります。もう六本!“マビノギオン・アサルト”!」 「ほう。左手に四本も仕込んだか……だが、遅いと言っているッ!!」 「きゃっ!?……しまった、スリーブ・ダガーまで……!」 いい加減苛つきだしたティールのタックルを受け、アルマの躯からは更に 六本の剣が飛び散る。“ヨルムンガルド”の鞘が二本のダガーに変形し、 左腕のアドバンスド・ターミナル“マビノギオン”からは、外装が分離し 変形した二振りのソード・ブレイカーと、加熱溶断機構付きスピア一本。 止めにウィップモード付きのエストックまでも、周囲に弾き飛ばされた! これで本当に、アルマが持っているのは“魔剣エルテリア”のみとなる。 「……よくもまあ、これだけの“剣”を持ち歩いていた物だ」 「私は剣を統べる、紅星の閃姫(ロードナイト・ヴァルキュリア)ですし」 「統べるだと?頼みの剣は全て弾き飛ばしてやったし、腰のそれは」 「ええ。抜けません……それでも、最後の一瞬まであたしは戦います」 何時ギブアップ信号を押そうかと思ったが、アルマはあくまでも冷静。 否……厳密には、その奥にビリビリする程の闘志を燃やし始めている! ティールも感じ取ったのか、隻腕を突き込む構えを崩そうとはしない。 ロッテもクララも私も、祈る思いでヴァーチャル・フィールドを見る。 「……いいだろう。今再び胸のCSCを刳り抜き、止めを刺してやる」 「例え剣が無くとも……あたし自身が“刃”となり、貴女を討つ!」 「やれるものならな……ッ!!」 本当に徒手空拳で戦う覚悟を決め、構えを取ったアルマに……敵が迫る! 一瞬でその距離は詰まり、豪拳が繰り出される!響く爆音と輝く閃光!! スピーカーの震動で筐体ごと揺れる私……だが、決着の声は聞こえない。 慌てて眼鏡のカメラをフィールドに戻して、その顛末をしかと見届ける。 「……こ、れは……!?」 「エルテリア!……貴方、やっと……認めてくれたんですね……」 「アルマ、お姉ちゃん……!!」 迫る鉄槌と、覚悟の戦姫。その間に割って入ったのは、剣の王であった。 ロックボルト代わりの目釘を解き放ち、“舞剣”エルテリアがその勇姿を 遂に表したのだ!……ティールの拳を、完全に受け止めるという形でな! 「お、重い……神姫が持っている訳でもないのに、何故だ!」 「……これは魔剣、不壊の刃。軍神とはいえ、容易には砕けません」 「魔剣、だと?……それを抜く為に、敢えてこんな戦い方を!?」 「そうです。重装甲の影に隠れたあたしの“甘え”を、斬る為に!」 やっと合点がいった。私が作りだした数々の防具、それを纏う事に依る 安心感……否、甘え。その未熟さを、剣は最初から見抜いていたのだ。 故にアルマが“弱さ”を捨て去る覚悟を決めた時に……魔剣は初めて、 自らの力をアルマに託す事を決断したのだ。流石は神浦琥珀の作、か。 剣の柄を握りしめ、自らの一部としたアルマは冷厳にティールを見る! 「これよりあたしの運命は刃と共にあり、力はあたしの意思と共に!」 「……ならばその運命も意思も、この拳で打ち砕いてくれるわ!!」 ──────大丈夫。勝利の女神が、舞い降りたよ……! 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/tanken/pages/123.html
TITLE レンタルWIKI #nomenubar - 2008年04月25日 (金) 15時10分52秒 無料うぃき #showrss2 うぃき運営 選択肢 投票 ある (0) ない (0) notimestamp (0) おすすめうぃき 順位 選択肢 得票数 得票率 投票 1 0 (0%) その他 投票総数 0
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1717.html
白花と黒華──あるいは聖者の再来(後半) 第三節:純愛 十二時過ぎ。アタシ達は、秋葉原駅から電車に乗り込んで移動を始めた。 出てくる途中に見た……その、アタシが“罪”を犯した現場。今はもう、 その痕跡も殆ど無くて、看板とかの再建工事がかなり進んでいたわ……。 「……でも、良かったわ。本当に、誰か一人でも“殺す”事が無くてさ」 「そうだな……怪我だけで済んだのは、本当に良かった……なぁ、皆?」 「ええ。だからこそこうして、今のエルナちゃんを抱きしめられます♪」 そう呟いたアタシ・エルナを、アルマお姉ちゃんが抱きしめる。彼女も、 アタシの中に残っていた“悪夢”が原因で、色々酷い目にあったのに…… マイスター同様、彼女もクララお姉ちゃんも……アタシを赦してくれた。 「ん。もう、誰にも咎められずに……こうしていちゃいちゃできるもん」 「いちゃいちゃ……って!?な、何言ってるのよクララお姉ちゃんッ!」 「だって、エルナちゃんだって大好きな“妹”なんだよ?当然、だもん」 「ふふ。クララちゃん、エルナちゃんが来てから積極的になってますの」 クララお姉ちゃんとも肩を寄せ合い、アタシの胸にロッテお姉ちゃんが、 そっと頭を載せる。そして団子状のアタシ達は皆で、マイスターの掌に。 こうして暫くの移動時間を、座ったマイスターと共に過ごす。着いたのは “Shibuya.st”……渋谷駅の出口。マイスター達が良く来る街らしいわ。 「ふむ、オープンカフェ辺りで軽めの昼食と行こうか?本当に軽めだが」 「はいですの~♪久しぶりにホットサンドとか、食べてみたいですの♪」 「ボクは……コーヒーを楽しみたいかな?まだまだ寒風吹き荒ぶからね」 「あたしは甘い物でも食べましょ……エルナちゃん、どうしましたか?」 皆は早速、お昼の話について盛り上がったけど……アタシの視線は、別の ある物を捉えていたわ。それは、少し先のオープンカフェに居る二人組。 チェアに座って楽しそうにしてた男と女が、不意に唇を重ねて……五秒。 重病……じゃないわ、十秒。そして十五秒。漸く離れて、はにかむ二人。 「……ねぇ、マイスター?愛する人達って、ああ言う事もするの……?」 「ま゛っ!?な、ななッ!何を言うのだエルナッ!?あ、あれはな!!」 「だ、だってほら。“告白”の時だって……キス、したじゃない……?」 何の事はない、素朴な疑問だったの……だけど、言霊の力は強大なのよ。 自分で声にしてから、ショートしそうな程に顔が熱くなるのを感じたわ! それは、マイスターも同じ。他のお姉ちゃん達も、とても恥ずかしげね。 でも……ええと。アタシ、何かいけない事を言っちゃったのかしら……? 「そ、そうは言っても……アレは、俗に言う“バカップル”の域だもん」 「ですよね、流石にあんな堂々と……見せつけるのは、えと……あのっ」 「……だけど、アレ位濃密なキスだって。一度でいいからしたいですの」 『──────ッ!!!!?』 そして、ロッテお姉ちゃんからの思わぬ吐露が……更に油を注ぐのよッ。 もう何も言えない。流れるパルスの苦しさに、口を開けるのも辛い位ね。 皆を見られない。嫌いじゃないの、むしろ……愛しくて、見られないッ! 十秒、二十秒……そして三十秒。永遠に似た時間が、過ぎていくわ……。 「あ、あの?お客様、お客様ー?ご注文はお決まりになりましたかー?」 「うわあッ!?あ、ああ……なんだ脅かすな。注文か、少し待ってくれ」 「ぷは、ふぅ……息が詰まりそうでしたの。呼吸は必須じゃないですが」 「だ……だったらあんな爆弾発言しないでよ、ロッテお姉ちゃんッ!?」 静寂は、外部……オーダーを取りに来た人間……の干渉で破られたのよ。 正直助かったわ、あのままだと……どんな流れになるか分からないから。 気を取り直して一通りのオーダーを済ませ、アタシ達は言葉を交わすの。 「さ、流石にアレはストレートすぎますよロッテちゃん~……あうあう」 「まさかロッテお姉ちゃんが、あんな事を言い出すとは思わなかったよ」 「だけど……マイスターも含めて、皆がそんな願望を持ってる筈ですの」 悪戯っぽく微笑みながら謝るロッテお姉ちゃん。軽い調子だけど、彼女は 確かに……全てを見通していたわ。そう、アタシが視線を向けたのだって 今の二人が幸せそうだったから。ロッテお姉ちゃんには、敵わないわね。 「そ、そうか……ふむ、昼食とお茶が済んだら次は街の散策と行くか?」 「この時期なら、色々な物が見られると思うんだよ。春物とか新作とか」 「流石にまだちょっと、夏物や水着は早いでしょうけど……いいですね」 「流行を読みとりつつ皆の感性を、更に磨くには丁度良いですの。ね?」 「え?う、うん……雑誌だけじゃ、分からない事もある……だろうしね」 そうして温かいお茶を飲んで、ケーキとか摘んでから……またアタシ達は 渋谷の街へと歩き出す。若い人間が多いこの街は、日本の先進的な流行を 知るポイントの一つ、なんだって。アタシにはまだ良く分からないけど、 だけど不意に路地へと入った時に……それは“負”の確信へ変わったわ。 即ちそれは荒んだ“心”。確かに先進的なら、エッジな連中も多い物ね? 「この先に、隠れた装飾品の店があるのだが……む?何だ、貴様らは?」 「へっへっへ~、おいテツ。思ったよりロリじゃないかよこの娘はよ~」 「いいだろ、偶にはこういうのもよ~……って訳でお嬢ちゃん、諦めな」 ナイフをちらつかせた男二人が、アタシ達……というよりもマイスターを 威嚇してきたの。薄汚い笑いを浮かべて、物色する様な目線でジロジロ。 普通の追い剥ぎとは違う、ってのは……流石のアタシにも分かったわね。 だからこそ、マイスターの言葉を受けた時に取る行動は、決まってたの! 「こう言う時はな、一気にホールドせんと隙を作る事になる……ぞっ!」 「ごふ、げぶぁああっ!?い、いてぇぇ……ぐぁうううぅ、きゅう……」 「と、トシ!?テメェ……ひっ、痛……な、なんだ!誰かいるのか?!」 「……今、アンタの首にナイフを突きつけてるわ。わかるでしょ?ほら」 マイスターは激しくスカートを翻して、暴漢二人組の背が高い方を強襲。 肘を肝臓の辺りへと叩き込んで、それで折れ曲がった膝を踏み台にしての 膝蹴りを、頬へと叩き込んだのよ。小さい躯を活かした、見事な一撃ね。 で、お姉ちゃん達はマイスターの躯にしがみつき……アタシはと言うと。 「か、勘弁してくれぇ~!俺達が、何したって言うんだよぉぉ……!?」 「マ……お姉ちゃんを襲おうとしたじゃない、正当防衛だと思うけど!」 「わ、分かった!何もしねぇからサツとか勘弁してくれよ、頼むよッ!」 「全くだらしない奴ね……ほら、さっさと相棒連れてずらかりなさいッ」 ちょっとした“トリック”で、背の低い方を脅す。案の定降伏した連中は 獣みたいな悲鳴を揚げて、我先に逃げていったわ。本当、情けないわね。 こんな簡単なハッタリも見抜けないなんて、刃を持つ資格は到底無いわ。 そう思ってアタシは『地に降りる』。ん、不思議ですって?そうかしら? 「た、助かりましたの~……マイスターの隙、どうカバーしましたの?」 「嗚呼、簡単よ。本物のナイフなんかいらないわ、ほら……これをねっ」 「それは……あの時にマイスターがあげた、お揃いのペンダントですね」 「先が尖ってるでしょ?これをこう、ね。キックの衝撃で飛んで、ね♪」 「咄嗟に首の裏へ回り込んで、押し当てれば……成程、いい手なんだよ」 紫色の“階級章”が嵌め込まれたそれは、アタシの“約束の翼”。これを ナイフ代わりの脅し道具にしたの。犯罪みたいな気もするけど、そもそも あっちが“脅迫”してきた訳だし、正当防衛は主張出来るはず……よね? 「全く災難だな、折角の勝負服が汚れてしまうぞ……あ、いやそのな?」 「マイスター、今確かに“勝負服”って言ったもん。そう言う事、かな」 「ち、違うぞクララッ!?げふげふ……ほら、皆無事か?乗れ、エルナ」 「勝負って、何を勝負するのよマイスター?今の連中じゃないでしょ?」 『気にせんでいい、いずれわかる』とマイスターはアタシを撫でるだけ。 悪い気はしないんだけど、何を勝負するのかしら……気になるわ、うん。 「兎に角往くぞ!崩れた雰囲気を戻すには美しき物に触れるのが一番ッ」 「はいですの~♪エルナちゃん、お手柄でしたのっ!いいこいいこ……」 「わわっ、ちょ!撫でなくてもいいわよ、ロッテお姉ちゃんってば?!」 「でも即応力は見事です……あたしも見習わなくちゃ、いけませんねっ」 ──────無粋な輩は要らない。今は姫の“愛”を語らう時間なのよ? 第四節:黒華 楽しい時間はあっという間に過ぎ、日が西空へと沈み始めていくわ……。 綺麗な夕陽よね……何度見ても、東京の夕焼けって好きなのよ。アタシ? それに他にも、今日は綺麗な物を一杯見られたし……良い日だったわね♪ 「あのアクセサリ、綺麗だったわね。服も、作りとかがよさそうで……」 「あの縫製とバランス感覚は見事だ……にしても、すっかり上機嫌だな」 「エルナちゃんには、初経験の事ばっかりだったからじゃないですか?」 「“告白”時のデート以来、大っぴらに出かけた事はあまり無いもんね」 「だから今日は、エルナちゃんの“社会見学”って意義もありますの♪」 そうなのよ。アタシには、凡そ初めての経験ばかりで……今日は興奮が、 まだまだ収まっていないわ。でも、お腹も空いてきた頃合いね。思えば、 “お腹が空く”なんて感触は……随分不思議なのよね。笑っちゃう位に。 だってそうでしょ?アタシ達は13センチの被造物。でも、楽しみなの。 「そう、ね……でもそろそろ、皆お腹空かないかしら……アタシだけ?」 「実の所、皆とっくに空いていますよ。時間的には、そろそろですしね」 「有無。そこでだ、今日は私が調べた穴場でディナーと行きたいのだが」 勿論、それを嫌な理由なんて皆にはないわ。早速、渋谷に出来たっていう 新しいお店に入ったんだけど……その、アタシの知識ではどんな店なのか 表現しようもないわね。なんというか、日本の家っぽいんだけどさ……? 「というわけで、今日は少々奮発して……ここの安いコースを頼もうか」 「奮発して安いコースって……マイスター、どれだけ凄い店なのかな?」 「高級店という程でもないですけど、これは分かりづらいですの。ほら」 「何々?『創作和食・雅』……ですか?そうさく、わしょく……うぅん」 なんでも、日本の伝統的な料理に世界各国の食材や調理法を組み込んだ、 『ハイブリッドな料理のお店』らしいわ。既存のカテゴリにない料理じゃ “安めの”コースだって言われても、値段なんか分からないわよね……。 アタシにも、皆が戸惑う理由が分かったわよ。でも、何故マイスターは? 「ね、いいの?幾ら誕生日やバレンタインだって言っても、辛くない?」 「ふふ。そこは此処を選んだ理由という物がある、まずは料理からだな」 その理由を問いただしても、スルーされちゃったわ……そうこうする内、 アタシ達の目の前には白くて丸っこいぷるぷるした物体が出てきたのよ。 何か、チェリカンの中身みたいな半固形物が掛かってるけど……食べ物? 「頂きますですの~♪まずはわたしから……ん、これお豆腐ですの?!」 「ボクも一口……ん、餡が程良い塩加減で美味しいんだよ。出汁も十分」 「でも、見慣れない食材とか入ってて……あ、これ中身もありますよっ」 「ほう?む、本当だな……どうも、中華風の“具”が入っている様だが」 「一緒に、食べてみるわね。んむ……少しクセがあるけど、美味しいわ」 皆が手を付けたので、アタシも箸で食べてみる……随分仕込まれたから、 食事の作法はそれなりに出来るつもりよ?兎も角……割ってみたら中には 美味しそうな野菜に、見慣れない物が一杯。これまた、食感がいいのよ! そうして何品も運ばれては、絶賛の嵐が続く。本当、ダメになりそうね。 「次は、この……何?ええと、ミルフィーユ仕立て?お菓子なの……?」 「嗚呼。肉類と別の食材を何層にも重ねて、調理した主菜……らしいが」 「食べてみればわかりますの♪はむ、はむ……うわぁ、凄い肉汁ですの」 「ろ、ロッテちゃん……あたし達の分は食べないでくださいね?はむっ」 「……服を汚さない様食べるのは、結構大変そうな料理なんだよ。んむ」 実際に、どんな料理か分からないってのもあったけど……それ以上に全部 美味しすぎて、明確に認識できる程冷静ではいられなかったわ。だから、 気が付けばもうシメのデザート……そこで、マイスターは微笑んだのよ。 「さて。それではこの店を選んだ理由に、登場して頂こうか。頼んだぞ」 「はい、今お持ちします……此方が当店自慢の、チョコケーキですよ~」 「あ、チョコ!?……マイスター、そう言う事だったんですね?もぅっ」 「ははは、そう言う事だアルマや。折角なので、これの美味しい所をな」 「バレンタインにチョコ……だけど、捻ってくるのは如何にもなんだよ」 眼前に出てきたのは、DVDドライブ位の大きさを見せつける、真っ黒な チョコレートケーキ。上の方には“Happy birthday”という、白い文字。 そう。誕生日を祝うケーキをチョコレートで作ってもらう為に、わざわざ こんな高いお店を、無理してチョイスしたのよ。ニクい演出じゃないの♪ 「あ、でもこれ誕生日仕様になってますね……お店の人の配慮ですか?」 「なら折角ですし謳いますの~♪ハッピーバースデー、マイスターっ♪」 「♪ハッピーバースデーマイスター、ハッピーバースデー……ディア♪」 「♪晶……ハッピーバースデー、トゥユー♪……マイスターおめでとっ」 「おめでとうなんだよ。これはボクらからの誕生日プレゼント、だもん」 でも、所謂“伊達振り”ではお姉ちゃん達も負けてないわ。アタシ達が、 全員分のお小遣いとかコネとかを駆使して、“真心”と“感性”を込めて こっそり用意しておいた、四つ葉のクローバーをあしらったストラップ。 四つ葉は、つまりアタシ達四姉妹の象徴……って訳。クララお姉ちゃんが マイスターの電話機に、いそいそと付けてあげるのよ。良い光景、よね。 「くぅ……お前達、有り難う。本当に、一緒にいてくれて有り難うなっ」 「ふふっ。それはボクらも同じなんだよ……ねっ?アルマお姉ちゃん?」 「ええ。貴女と同じ道を歩いていけるんですから……ロッテちゃんもね」 「ん。わたし達こそ、側にいさせてくれて感謝ですの♪エルナちゃんっ」 「う、うん……これだけ長くいると、漸く信じられそうな気がするのよ」 時間はそれ程じゃなくても……濃密なやり取りは、アタシの心を開くには 十分な、掛け替えのない経験になりつつあったわ。それは、嘘偽りのない アタシの“真心”。この人達と一緒にいたい、『大好きという気持ち』。 「……さて、昼はあんな物も見た訳だし。その、やってみるか?エルナ」 「え?!あ、あんな物って……ま、マイスター?ケーキを……んむ!?」 それを見透かしていたのか、頬を桜色に染めながらも……マイスターは、 ケーキを一口含んで……そのままアタシと……キスをする。アタシの耳を 小さな白い手で塞ぎながら、ゆっくりじっくり。チョコケーキを融かす、 それだけに集中するかの様に、互いの舌を……濃密に絡め合うのよ……。 口内でケーキが崩れて、魅惑的な“水音”が超AIの内を埋め尽くすの。 「……ん、んん……ぷぁ、ふぅ……ど、どうだ?物は試し、というがな」 「はぁ、あ……ん、やっぱりアタシにはヘビーね。おかしくなりそうよ」 マイスターの手が離れて、互いのチョコを舐め取ってからも……胸の中を 埋め尽くす、激しいノイズは消えないわ。この人と、永久に共にいたい。 実際は永遠なんか無いけど、だけど“大好き”って気持ちが消えないの。 それは、ビターな中にも微かに宿っていた……とても甘い、隠し味の様。 「う、うっわぁ……マイスターもエルナちゃんも、大胆ですの~……♪」 「こんなの見られたら、言い訳出来ないですね……でも、幸せそうです」 「大丈夫だよ、ここは個室だから……邪魔は入らない、と思うもん……」 「ふぅ……ん?く、クララ?何を──────むぐ、んんっ……!?!」 そしてアタシ達のそんなやり取りは、お姉ちゃん達に火を付けちゃった。 まずはクララお姉ちゃんが……そして、急かされたアルマお姉ちゃんが。 最後にビターなケーキの中でも甘めのクリームで、ロッテお姉ちゃん…… 都合三人の連続した“ディープ”なキスを、マイスターは一人で受ける。 終わった時にはもう真っ赤っか。息も荒くなっていたわ……でも、綺麗。 「は、あ……はぁ……だめ、だ。私がおかしくなってしまう……はふぅ」 「あんなの見せつけちゃうからよ、マイスターの悪戯心がいけないのっ」 「そうですよね♪でも『スウィート・バレンタイン』にはなりましたし」 「ボクらは十分満足したんだよ……ううん、実はまだ少しあるけどね?」 「ええ。でもそれは、お家に帰ってからですの♪夜は長いですから……」 ──────長い一日は、もうじき終わるけど……でも、終わらないわ。 第五節:楽園 夜もとっぷりと暮れて、街はすっかり恋人だらけ。そんな渋谷を抜け出し アタシ達は電車で秋葉原へと帰ってきたわ。ここもそれなりに人が一杯。 でも、それには目もくれずに……真っ直ぐMMSショップ“ALChemist”へ。 今は兎に角、アタシ達五人の時間と空間が欲しかったのよ……何故かね? 「ただいま、ですの~♪……さ、まずはお風呂に入って着替えますのっ」 「有無。朝はシャワーだけだったからな。湯を張って、皆で入ろうか?」 「喜んでっ。それじゃあたしは、皆のパジャマとか用意してきますね!」 「ボクは、部屋の暖房を調整しておくんだよ。エルナちゃんはお風呂を」 「う、うん。分かったわ……先に、セットしておく。よっと……オンッ」 まずは、一日の穢れを洗い落とすお風呂。今日は、五人で仲良く入浴よ。 なんだかんだで、土埃とかチョコレートとかで少し汚れちゃったからね。 覗いたら斬ってやるわ!ってマイスター・晶お姉ちゃんなら言うかしら? 「ロッテお姉ちゃん、背中流してあげるわよ……んしょ、よいしょっと」 「ひゃうんっ♪じゃあ、わたしはクララちゃんの背中を流しますの~♪」 「ん、んんぅっ……!ボクはそれなら、アルマお姉ちゃんのを……っと」 「きゃぅぅっ!?え、ええと……あたしは、マイスターのツボ押しをッ」 「ぅ、ぐっ!……くうう、そこは弱いな……痛たたた、効きすぎだ!?」 お風呂で躯を磨いたら、暫くは躯を休める時間。寝るにはまだ早いから、 五人それぞれの好みで、アットランダムにBGMを流すの。一応今日は、 少し激しいのを控えめにして、落ちついたムーディーな曲を選んだのよ? 「ほぉう……次に流れてきたのは、クララのクラシックか……良い曲だ」 「楽器の音色ってのは、落ちつきますの……あ、マイスターお水ですの」 「これは、ピアノかしらね……青い空と草原が思い出されるわよ、これ」 「グリーン……なんとか、でしたっけ?曲名が、出てこないんです……」 「ボクも忘れちゃったけど……まぁ、問題ないと思うんだよ。今はね?」 照明類を薄暗い配置、というか間接照明オンリーにして……暫し雰囲気を 味わうのよ。皆が思い出すのは、マイスターと出会ってからこれまでの、 激動の一年。アタシも、殺戮兵器から神姫に生まれ変わるまでの、そして 神姫に生まれ変わってからの、充実した日々を思い出すの……有り難う、 アタシを産み出してくれた皆。アタシは今、とても幸せに過ごせてるわ。 「ふぁあ……うむ、そろそろ眠くなってきたな。寝るとしようか……?」 「あ、それでお願いがありますの……マイスター、今日だけは一緒に♪」 「何?一緒に寝る、というのか……クレイドルで無くて、バッテリーは」 「料理で補給出来た分がありますから、明日お昼寝すれば大丈夫ですよ」 「だから……今だけは、マイスターの胸の中で眠りたいんだよ。ボクら」 「うん。今日は離れたくない、眠りに落ちるまで……側にいたいの……」 暖かい想いが高ぶった所為か、誰とも無くマイスターに抱かれて寝る事を 望む。勿論アタシだって、大切な“心”を抱いて寝たいの。何故か今日は そういう気分だから……『恥ずかしい』とか、そう言う事は無かったわ。 「……全く、仕方のない娘らだ。寝相は良いけど、気を付けるんだぞ?」 『はいっ……!!!!』 腕を広げたマイスターの胸に、アタシ達四人が滑り込む。そして抱かれた ままに五人は、ベッドの中へと潜り込んだ。とても、暖かくて……とても 幸せな気分。まるで“楽園”にいるかの様な、至福の夜が悠久に過ぎる。 ううん。此処こそが、この人達の側こそが……アタシの“楽園”なのよ。 そしてそれは、他の四人にとっても同じ事。アタシ……神姫で良かった。 「こんな小さな躯だから、見えない物も見えて……大事な想いを抱ける」 「ん……?どうした、エルナ……“神姫”になれて、嬉しいのか……?」 「ええ。こうして神姫として、大切な人の側にいられるのが……とても」 「……わたしもですの。小さな躯で、大きな想いを手に出来ましたの♪」 「ボクも、なんだよ。大切な姉妹達を得る事が出来たのは、神姫だから」 「皆、大好きです……今日は、とても良い夢がみられそうですね。ふふ」 『──────おやすみなさい──────』 ──────夢の果て、幸せに抱かれて……羽撃たき続けたいわね。 ──その夜は“夢”を見たの。とても愛しい人の……でも、幻じゃない。 だって何時もこれからも、五人の姉妹は共にあるから。ここは……小さな 錬金術師達の集う、幸せの工房。次に産み出されるのは、何かしら──? メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/mellow11/pages/17.html
Wiki #bf ブログ検索に戻る 更新日2007-01-16
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2223.html
ウサギのナミダ 番外編 少女と神姫と初恋と その1 ◆ 「なあ、八重樫。昼休みに時間もらえる? ちょっと相談に乗ってもらいたいんだけど」 八重樫美緒だって、年頃の女の子である。 男子と話すときは少しドキドキするし、こんな台詞ならなおさらのこと。 それが、憧れている男の子からなら、思考が真っ白になって当然だ。 「え、あ……うん……いい、けど……」 「そっか、よかった。じゃあ、弁当持って屋上集合で」 「え、お弁当……?」 「ちょっと込み入った話になりそうでさ……八重樫にしか相談できないんだけど……だめかな」 「え、あ……うん……いい、けど……」 「よかった! それじゃあとで」 「うん……それじゃ……」 さわやかな笑顔を残し、去りゆく彼の背中を、呆然と見送るしか美緒にはできなかった。 彼はすぐに男子の輪に取り込まれてしまう。 「安藤! お前、八重樫になに話してんの」 「大したことじゃねーよ」 ははは、と笑って答える彼。 そう、大したことじゃないんだ。 男子たちはもう別の話題で盛り上がっている。 美緒は苦笑する。 ただちょっと、声をかけられただけ。期待するなんてどうかしてる。 美緒が鞄から教科書を取り出そうと視線を下げたそのとき。 「美緒っ!! アンディと何話してたんだ!? あたしにっ、親友のあたしに話してみろっ!」 うきうきとした口調と共に、後ろから首に腕を巻わされ、絞められる。 「ちょ……有紀……くるし……」 「ああ? おっと、わりぃわりぃ」 手荒なスキンシップをしてきたのは、親友の園田有紀。 仲良し四人組の一人である。 有紀の長い腕をはがしながら、視線を上げると、目の前に残りの二人も立っていた。 「よかったわね。きっかけが掴めそうじゃない」 「そうだよ、美緒ちゃん! ファイト、押し倒せ!」 蓼科涼子の落ち着いた物言いは、師匠譲りだろうか。 江崎梨々香は、顔に似合わず過激なことを言う。 それにしても、彼はこっそり美緒に話したのに、なんでみんな注目しているのか。 少しぐらい目をそらしているふりをするのが、友達がいと言うものではないだろうか。 「そんなんじゃないわ。ほんとに、大したことじゃないもの……」 そう言って、顔を上げた美緒は、涼子と梨々香の背後を見て、凍りつく。 注意喚起する暇もなく、女子の一群が二人の背後から押し寄せ、はじきとばし、美緒をあっと言う間に取り囲んだ。 「ちょっと、ヤエガシ! 今のどういうこと!?」 「安藤君とどういう関係!?」 「今アンディと話したこと、洗いざらい吐きなさい、ミオ!」 「え、ええええぇぇっ!?」 美緒は自分の席から立ち上がることさえできないまま、女子たちの詰問を受けた。 だが、あの短い会話の内容を何と答えられるというのだろうか。 よく見ると、自分を囲む女生徒には、自分のクラスメイトでない女子も含まれているような気がする。 美緒はとまどいながら、お茶を濁し続けるしかなかった。 教壇でクラス担任の教師が、わざとらしく大きな咳払いをするまで。 美緒に声をかけてきた彼……安藤智哉は、同学年女子の間で一番人気のある男子だった。 ◆ クラスメイトたちにおける、八重樫美緒の評価は「変わり者の文学少女」である。 整った顔立ちに、セミロングの黒髪、銀縁の眼鏡はいかにも文学少女といった風情で、理知的に見える。 実際、彼女は読書家だ。時間があれば本を開いているし、図書館の常連であることはよく知られている。 おとなしく、女の子らしい優しさと気遣いの持ち主で、男女問わず、クラスメイトは彼女に好感を抱いている。 成績も常に学年上位。まさに絵に描いたような優等生だ。 また、あまり表立ってはいないが、美緒に憧れている男子も少なくない。 その理由の一つが、彼女の魅力的な胸にあることは、年頃の男子にしてみれば仕方のないところであろう。 ブレザーの上着を着てもなお存在を主張する大きな胸は、楚々とした性格と外見とはあまりにミスマッチで、美緒の意志に関係なく、男子たちを密かに魅了しているのだった。 そんな美緒を「変わり者」呼ばわりさせているのは、彼女の交友関係に原因がある。 いつも美緒と一緒にいる三人。彼女たちは揃いも揃って変わり者だった。 園田有紀は、長身でプロポーションもよく、顔もボーイッシュな美人だ。乱暴な男言葉を使うが、それがよく似合っていて、嫌みを感じさせない。下級生女子には絶大な人気を誇っている。 しかし、彼女は言葉だけでなく、性格も乱暴だった。短気で、男子とでも平気で取っ組み合いをする。しかも強いので、負けるのはたいがい男子の方だ。 また、学業は下の下。数学以外の勉強が壊滅的だ。 スポーツは万能で、特に球技は特待生とも向こうを張るほどの実力を持つ。球技大会のバスケットボールで、バスケ部の部員三人のマークを蹴散らしてダンクを決めたのは、もはや伝説だ。 しかし、なぜか再三のクラブ勧誘を頑なに断っている。 有紀は劣等生のレッテルを貼られ、教師たちからも問題児扱いされていた。 蓼科涼子は、有紀ほど悪目立ちするタイプではない。 むしろ真面目な性格で、責任感もあり、努力を欠かさない。そのため、教師たちからは人気がある。 長い黒髪を後ろで結わえたポニーテールは、彼女のストイックな性格によく似合っている。 だが、ストイックな性格こそが、蓼科涼子の問題点だった。 生真面目すぎるのだ。 特に同年代の男子は不真面目に見えるのか、いつもやぶにらみである。 女子でも「カタ過ぎる」と言って、涼子を敬遠する者が少なくない。 涼子に近しい友人以外で、彼女の笑顔を見た者はほとんどいないという有様である。 もちろんその美少女ぶりに、付き合ってくれと告白した男子は数多い。 しかしそのたびに一言、 「あなたと付き合うことは、金輪際あり得ません」 とばっさり切り捨てられる。 あまりにとりつく島のない物言いに、逆ギレした男子が、直後に涼子に襲いかかったことがある。 だが、逆に投げ飛ばされて地面にたたきつけられた。 実は涼子は合気道の有段者である。小さな頃から定期的に合気道の道場に通っているのだった。 以来、涼子は陰で「武士子」と呼ばれているのだが、それを聞くと本人は激昂するという。 生徒の人気という点では、江崎梨々香が四人の中で一番かもしれない。 梨々香は男女ともに人気がある。 性格は明るく、社交的だし、可愛い印象の美少女だ。 彼女はファッションにとても詳しい。コーディネートは友人たちからいつも相談を受けるし、自分で服や小物も作ってしまうほど。 本人の普段着はピンクハウスや甘ロリ系ばかりなのだが、それがまた異様に似合う。 料理も上手で、家庭科実習の残りなど、男子よりも女子が狙っている。 その明るさ、家庭的な趣味もあいまって、男子の人気もすこぶる高い。 だが、彼女にも問題点はある。梨々香はとにかく勉強ができない。家庭科以外の科目は、間違いなく最下位クラスである。 それだけなら勉強すればいいのだが、本人に勉学に励む気がまるでない。しかも、成績が悪いことを全く気にしていない。だから、成績が上がるはずがないのだった。 教師たちから見れば、梨々香は非常にたちの悪い劣等生だった。 このように、性格も趣味もまるで違う変人が、なぜか仲良しグループを形成している。 そのリーダーが、普通の優等生である美緒なのだ。 三人とも、美緒の言葉は、なぜか素直に聞き入れる。 有紀の乱闘に仲裁に入れば、「仕方ねぇなぁ」と言って、あっさり拳を引っ込める。 「武士子」呼ばれて激昂する涼子を、一瞬にしてなだめられるのは美緒だけだ。 追試になっても勉強しようとしない梨々香に、「いい加減にしないと怒るわよ?」の一言で、一心不乱に机に向かわせる。 なぜ変わり者の三人が、ここまで美緒を立てるのか。 三人はそれぞれ抜きんでた特技があるのに、クラブ活動を頑なに拒むのはなぜか。 そして、全く方向性の違う四人の共通点とは何なのか。 その理由こそが武装神姫だった。 彼女たちはいずれも神姫のオーナーであり、ゲームセンターに入り浸るバトルロンド・プレイヤーだ。 クラスメイトたちは思う。 なぜ武装神姫なのか、と。 それこそが、美緒を変わり者に仕立て上げている最大の理由なのだった。 ◆ 午前中の授業は、まったく上の空だった。 安藤智哉は、美緒にとって憧れの男子生徒だ。 彼の印象を一言で言えば、さわやか系、だろうか。 とにかく、表情にも言葉にも屈託がない。 怒った顔も、悩んだ顔も、裏を感じさせない。 いつも仲間たちの輪の中で、笑っているような人だ。 その笑顔が可愛くて、魅力的だと、多くの女子が思っている。 成績は中の中といったところだが、スポーツが得意だ。 特に得意なのはサッカーで、いつも昼休みにクラスメイトとボールを蹴っている姿を見かける。 球技大会でもフォワードで大活躍し、クラスの優勝に貢献した。 その姿を見てファンになった他クラスの女子や、下級生も多いらしい。 だが、安藤もまたなぜか、特定の部活動はしていない。 ある意味、女子の理想の彼氏像を体現しているような安藤智哉は、モテて当然だった。 しかし、いままで、安藤が特定の女子と付き合ったことは確認されていない。 同じ中学出身者はもちろん、同じ学年の女子で、安藤と付き合いたいと思う者は数知れない。 多くの女子が、安藤の彼女の座を、虎視眈々と狙っている。 美緒は、彼女の座を狙うだなんて、大それたことは考えていない。 時々妄想の中で、かの『エトランゼ』菜々子とティアのマスター・遠野がゲーセンで談笑している姿に、自分と安藤を重ね合わせてみたりするのが関の山だ。 そもそも、美緒と安藤の共通点なんて、同じクラスであること以外、何もないのだ。 話をしたことくらいはあるが、それは単なる連絡事項とか挨拶とか、その程度のことだった。 安藤が自分をどう思っているかなんて、考えたこともない。考えるまでもない。 それが、今朝のように名指しで、しかも個人的に相談だなんて、全く想定外だった。 美緒は視線を窓際の前の方に走らせる。 そこには頬杖をついて黒板を見る安藤の後ろ姿。 その背中を見つめるだけで、胸のドキドキが止まらなくなる。 いったい何の相談なんだろう。 美緒には想像もつかない。 期待半分、不安半分な気持ちを持て余したまま、午前中は過ぎていく。 ◆ 一方、安藤智哉を本命と狙う女子連には、激震が走っていた。 高校入学からこれまでの数ヶ月間、安藤が特定の女子を誘って昼食だなんて、前例がない。 いや、同じ中学出身者に言わせれば、中学時代だって一度もなかった。 それが今朝、覆された。 しかも、相手は、物静かであまり目立たない文学少女の八重樫美緒である。 まったくノーマークの人物だった。 確かに美緒は、男子の人気はそこそこある。 だが、安藤が美緒に特別な関心を寄せたことは、今までなかった。 美緒は安藤を憎からず思っているようだが、表立った行動に出たことなどない。 しかも、美緒は変人グループのリーダーである。 彼女たちにしてみれば、ライバル候補としてまずあり得ない、と思っていた人物だ。 彼女たちは、急浮上した新たな恋のライバルに、何を話したのか尋問したが、本人の答えは要領を得ない。 いったい、安藤は美緒に何の相談をするのか。 恋のライバルたちは、いったん休戦に合意。非常事態宣言を発令した。 今回の事案に対し、周辺情報の調査が開始され、様々な情報が飛び交う。 授業中の情報伝達方法は、いにしえより、ノートの切れ端と相場が決まっている。 数え切れないほどのノートの切れ端が、教壇に立つ教師には気づかれぬよう、極秘裏に受け渡される。話題の本人たちのみを迂回し、教室内を音もなく行き交った。 短い休み時間中は、教室の端、階段の踊り場、女子トイレなど、そこかしこで緊急ミーティングが開かれ、情報の検討と精査が行われた。 そして、情報の真偽は、携帯端末からのメール配信によって、すぐに情報共有される。 事態は高度情報戦の様相を呈してきた。 しかし、昼休みを目前にしても、最重要事項……安藤の相談内容については、まったく判明しなかった。 ◆ 「おーい、八重樫! こっち!」 昼休み。 美緒が屋上に上がると、ベンチの一つに陣取った安藤智哉が手を振った。 彼の指示通り、五分ほど教室で待ってから、屋上にやってきた。 その間に、安藤は学食でパンを調達し、上がってきたらしい。ビニールの手提げ袋を手にしている。 美緒は、安藤から一人分ほどの間をあけて、ベンチに腰掛けた。 「はい。八重樫はこれが好きだったよな」 俺のおごり、と言って安藤が差し出したのは、ミルクイチゴのパックだ。 美緒は驚きながらパックを受け取る。 「ど、どうして知ってるの……?」 「え? だっていつも、そればっかり飲んでるじゃん」 安藤はコーヒー牛乳のパックにストローを刺した。 美緒は混乱する。 確かに、美緒はいつもミルクイチゴを決め打ちで買っているが……でも、そんなことを、まさか彼が気にとめていたなんて、夢にも思わないではないか。 (……これって、どういう夢なの……!?) 彼からのささやかなプレゼント。 二人きりのお昼ご飯。 今の状況に、ひどく現実感がない。 でも、一口飲んだミルクイチゴは、いつも通りの甘い味がした。 ◆ 「かたい……かたいよ美緒ちゃん! もっとこう、やわらかく、かわいく、媚びて笑えば、もう男なんかイチコロなのにっ!」 小声でエキサイトしている梨々香を押さえ込みながら、涼子は二人の様子に目を細める。 「美緒の飲み物まで用意してるとは……いつもながら、さすがの気遣いね」 「あれ、涼子はアンディとそんなに仲良かったっけ」 「同小、同中だからね」 涼子と安藤は、特に仲がいいわけではない。 小学校から同じ学校だし、同じクラスにもなったこともあるから、お互い顔は見知っている。 また、二人とも噂に上りやすい性質なので、情報がよく耳に入ってくるだけだ。 安藤の気遣いの良さ、マメさは昔からの筋金入りである。 「まあ、安藤はあのくらいして当たり前よ。昔からそうなんだから」 「……そう思ってない連中も多いみたいだけどな」 涼子の言葉を聞きつつ、有紀は背後を振り返る。 そこにはクラスの女子が大勢隠れつつ、二人の様子を覗いる姿がある。 クラスメイトの半分以上がいるんじゃないだろうか。 階段ホールのある建物の裏側は、通学ラッシュのバスの中もかくや、という状況である。 そんな女子たちは皆、今の二人の様子を見て、絶望的なショックに顔を真っ青にしていたり、ハンカチの端を噛んで細い奇声を上げたりしている。 二人を監視しているメンバーは、階段ホールにいるだけではない。 美緒と安藤が座るベンチから少し離れたところで、他クラスの女子グループが談笑するふりをしながら、監視活動を行っている。 そうした女子グループがぐるりと二人のベンチを取り囲む形に、いつのまにかなっていた。 だが、さすがに安藤自身が美緒を呼び出しただけに、妨害するわけにも、すぐ近くに行くわけにもいかず、ある程度の距離を保った包囲網を形成することとなった。 ゆえに、二人の会話はあまりよく聞こえない。 「……座るベンチが分かっていれば、盗聴器を仕掛けたものを……」 近くにいた女子の一人が呟く。 盗聴器をいつも持ち歩いてんのか、と突っ込みたくなる有紀である。 有紀は呆れながら、いまなお微笑ましい、ベンチにいる二人に目をやった。 ◆ 美緒は持ってきた弁当の包みを開け、小さな弁当箱のふたをそっと開く。 卵焼きにウインナー、きんぴらごぼう、チェリートマトに蒸しキャベツ。 半分はごはんが占めており、真ん中に梅干しが乗っている。 何の変哲もない、弁当の定番メニューだ。 「……それ、八重樫が作ったの?」 コロッケパンをかじりながら、安藤が尋ねてきた。 「う、うん……そう、だけど……」 美緒は一人っ子で、両親は共働きだ。 働いている母が早起きして弁当を作るのは大変だ。 だから、家族三人分の弁当を作るのは美緒の役目だった。 「すっげー。朝早く起きて、こんなおいしそうな弁当作ってくるなんてさ」 「そ、そんな……大したこと、ないよ……ぜんぜん……」 本当に感心している様子の安藤に、美緒は恥ずかしくなってしまう。 弁当の定番メニューなんて、短い時間で作れてしまうもので、ちっとも凝った料理じゃない。 美緒にしてみれば、見せるのもためらわれるほどの手抜き料理だ。 それを褒められるなんて。 美緒はうつむきながら、横目で安藤を見つめた。 総菜パンを食べる彼。 お弁当は持ってきていないのだろうか。 お昼ご飯が購買のパンだけでは、少し味気ない感じがする。 安藤は、毎日購買のパンを買っていたように思う。 それでは食事が偏ってしまうし、毎日代わり映えしない。 そんな風に思ったら、つい口から言葉が転がり出た。 「……よかったら、少し食べる?」 ……わたし、何言っちゃってるの!? 言った次の瞬間には後悔していた。 ちょっと彼がお昼に誘ってくれたからって、調子に乗りすぎだ。これでは下心があるみたいではないか。 ほら、彼だって呆れてこっちを見ている。 だが、美緒の予想と違って、安藤からかけられた言葉は、 「……いいの?」 むしろちょっと驚いた感じの口調だった。 美緒は安藤の顔をまともに見られないまま、そっと、弁当箱を差し出す。 小さく頷いた。 安藤は嬉しそうな顔をして、卵焼きを一切れ摘むと、口に入れる。 もぐもぐと口を動かす気配。 「……うまー……」 ため息のように呟いた後、安藤は美緒に満面の笑みを見せた。 「すごいおいしいよ! こんなにうまい卵焼き、久しぶりに食べた」 「そ、そう……よかった……」 もう、助けて。 嬉しいはずなのに、楽しいはずなのに。 せっかく自分に向けられた笑顔を、美緒はまともに見ることができない。 めいっぱい緊張した美緒の心は、逃げ出したくなっていた。 ◆ 共同戦線を張った女子連は、大ダメージを被っていた。 手作りの弁当を二人で摘むなど、まさに清き学生の恋人同士の姿である。 その一撃たるやメガトン級で、共同戦線を一瞬にして崩壊させる破壊力だった。 ここで二人の共同作業を阻止すべく、過激派の実行部隊が動き出しそうになったが、状況がそれを許さない。 当の安藤が満面の笑みを持って、美緒の弁当を食べているのだ。 ここで邪魔をしたら、かえって自分たちの心証が悪くなりかねない。 また、今日の本題は弁当ではない。 安藤が美緒を呼び出した理由がまだ明らかになっていないのだ。 女子連は苦渋の選択を強いられる。 階段ホールの陰に隠れたクラスメイトたちは、毒ガスを食らったかのように、苦悶の表情を浮かべつつ、声を出さないように喉を押さえている。 まるで地獄絵図の様相だった。 「……ばかじゃね?」 呆れた有紀の端的な感想である。 美緒の様子を見れば、完全にテンパっているのは明白だ。 「あー、あれは、購買のパンばっかり食べてたら栄養価が低くて心配だ、とか思って、反射的に弁当差し出したのねー、たぶん」 なま暖かい眼差しで二人を見ながら、涼子は棒読みで言った。 さすがに親友だけあって、性格を読み切っている。 親友のテンパった姿を見ながらも、空気を読まずにエキサイトしている人物もいる。 「そおよ、美緒ちゃん、ナイス! 手作りのお弁当はポイント高いよ! このまま、毎日作って来てあげるって展開に……」 「それ以上はやめとけ、梨々香。後ろの女子連中に殺されるぞ」 頬を膨らませて不満を露わにする梨々香だったが、さすがに殺気だったいくつもの視線に睨まれては、口を噤まざるを得なかった。 美緒の親友三人は、再びなま暖かい眼差しで、二人を観察する。 ◆ 「……それで、相談って……?」 昼食を食べ終わり、二人の手にジュースのパックだけが残ってすぐ、美緒は切り出した。 安藤は気を遣ってくれたのか、ずっと気さくに話しかけてくれたが、美緒はまともに会話することができなかった。 さぞかし話し下手な女だと思われたことだろう。 美緒は自己嫌悪に陥りながらも、それでも安藤の相談には真摯に対応しようと心に決め、勇気を振り絞って切り出したのだった。 「ああ……これなんだけどさ」 ストローから口を離した安藤は、傍らにあった一冊の本を手に取り、美緒に渡す。 美緒はイチゴミルクを一口飲んで、本を受け取った。 少し分厚い、飾り気のない本。 どこかで見たことのあるデザイン。 タイトルを見る。 美緒はイチゴミルクを吹き出しそうになった。 ◆ 階段ホールの陰では、今度は親友三人が悶絶していた。 声を上げずに爆笑しているのだ。 涼子は声を上げようとする梨々香の口を押さえながら、背中を丸めて身体をぷるぷると震わせている。 有紀にいたっては、声を立てずに爆笑し、地面をのたうち回るという器用なことをしていた。 クラスメイトは三人を奇異な目で見ている。 安藤が美緒に渡した本を見て、爆笑し始めたのだ。 しかし、女子連には、三人が笑いのツボを突かれたポイントがわからない。 見れば美緒も、なにやらむせている。 「ねえちょっと、あの本はなんなの? 何がおかしいって言うのよ」 クラスメイトの一人が、身悶えしながら無言で笑う有紀に言った。 有紀は両手で目に浮かんだ涙を拭い、ひーひー言いながら答えた。 「まあ、そりゃアンディも美緒に相談するわな……あれはマニュアルだよ」 「マニュアル?」 「そう。武装神姫の取扱説明書だ」 その場にいたクラスメイト全員が、毒気を抜かれたような顔をした。 ◆ 美緒はかろうじて、イチゴミルクを吹くという醜態をさらさずにすんだ。 そんなに驚いたのには、二重の意味がある。 一つは、安藤が武装神姫について相談を持ちかけてきたことだった。 まさか彼が武装神姫に興味があろうなどとは、夢にも思っていなかった。 もう一つは、手渡されたマニュアルの武装神姫の機種である。 「アルトレーネ……」 「お。八重樫、知ってるんだ?」 知っているも何も。 アルトレーネは、今、神姫オーナーの間でもっとも話題の新型機だ。 ここのところ、武装神姫の新製品のリリースに、各メーカーともかなり慎重である。 各メーカーとも特色ある人気機種が定番となりつつあって、保守的になっているのだ。 新しい武装神姫を開発するより、人気機種のリペイントバージョンや、装備を変更、追加したリパッケージ品の市場投入を優先したのである。 しかし、目の肥えたユーザーたちは納得がいかない。 フルセット品の購入離れがはじまり、ヘビーユーザーは既存の神姫のカスタマイズに走るようになった。服を着せたりして神姫のいる日常を楽しむ「非武装派」も増えている。 そのため、神姫自体の売れ行きは横ばいなのに、カスタムパーツや神姫サイズ服の市場は急激に広がっていた。 そんな状況下、彗星のごとく現れた新製品、それが戦乙女型MMS『アルトレーネ』である。 人気機種の要素も取り入れながら、独自性を備えた豪華な装備、清廉な印象を与えるデザインに、美しさとかわいらしさを兼ね備えた神姫本体。 武装派には、装備の豪華な仕様と組み替えの可能性に期待が集まった。 非武装派も、神姫自体の良さに前評判が集まった。 かくして、アルトレーネは、新規参入メーカーの新作であるにも関わらず、予約が殺到し、生産が追いついていない状態だ。 その盛り上がりを受け、既存メーカーも新製品を発表し、神姫市場はいまや活況を呈している。 そのアルトレーネは、先週末に発売になったばかりだ。 いま、ゲーセンの武装神姫コーナーはアルトレーネの話題で持ちきりと言っていい。 美緒が知っているのも至極当然のことだった。 「今話題の神姫だもの。もちろん知ってるわ。……でも、よく買えたね。ほとんど予約完売らしいけど」 「もらったんだよ」 「え?」 「誕生日プレゼントなんだ。オレのおじさん、アルトレーネ作った会社にいてさ、製品サンプルをプレゼントにくれたんだ」 「なるほど……」 武装神姫の初心者である安藤が、そう簡単に人気機種を手に入れられるとは思えない。 納得がいった。 「それでさ。日曜にマニュアル読んでみたけどよくわからなくて……なんか小さくてデリケートな部品もあるし」 「ああ、CSCね」 「だから、起動の仕方を詳しい奴に聞いてみようと思って……それで八重樫に声かけたってわけ」 「そう……」 期待していたわけではない。 でも、少しも期待してなかったと言えば嘘になる。 安藤の中の美緒は「武装神姫に詳しい奴」に過ぎないのだ。 すこしがっかりしたが、美緒は気持ちを切り替えた。 そう、期待していた自分が悪いのだ。 せっかく安藤君がわたしを頼ってきてくれたんだ。 だから、少なくとも彼には、自分の誠意を尽くそう。 「わかった……わたしでよければ、力になるわ」 「そっか。やった!」 にっこりと笑った彼の顔を、美緒はまともに見られなかった。 無防備にそういう顔するのは、ずるい。 どんな女の子だって、わたしだって、勘違いしたくなってしまう。 美緒はうつむきながら、手元にあるマニュアルの表紙の文字を繰り返し読み続けた。 だが、そんな美緒の気持ちなど伺い知ることもなく、安藤は話し続ける。 「八重樫、今日なんか用事ある?」 「え……? えっと」 放課後の用事は、きっと今日もいつもの四人でゲーセンだ。 それは日課のようなものなので、特別な用事ではない。 安藤の相談に乗ってから、遅れてゲーセンに行っても、他の三人は気にしないでいてくれるだろう。 「ううん、特にないよ」 「それじゃ、放課後、荷物置いて着替えたら、M駅の改札集合で」 「え?」 図書館あたりで詳しくレクチャーということではないのか? 「え、って……だって、神姫の起動のやり方教えてくれるんだろ?」 「うん……そう、だけど」 「だから、ウチに来て、オレがやるとこ見ててよ。そしたら間違いないし。八重樫の神姫もみたいし」 「……そ、それは……その」 「お礼に、親にケーキ買ってこさせるからさ。何がいい?」 「……チーズケーキ」 なにオーダーしちゃってるの、わたし!? 美緒がそう思ったときにはもう、安藤は笑いながら頷いてしまっていた。 「わかった。飲み物はミルクイチゴは用意できないから、コーヒーか紅茶で勘弁してくれ」 「え、あ、あの……」 「っと、もう昼休み終わるな……それじゃ、放課後。よろしくな!」 安藤は立ち上がり、階段ホールへと歩き出す。 美緒は呆然とその背中を見送るしかできなかった。 まだ手元に、アルトレーネのマニュアルが残っている。 返さなくちゃ。 あ、でも、放課後でいいのか……。 放課後。 それを意識した瞬間、美緒の心は沸騰した。 顔が真っ赤になっていることを自覚する。 顔どころか体中から火が吹き出しそうだ。 あまりに急転直下、超絶怒濤の展開に美緒の思考は吹っ飛んでいた。 (これって、どういう夢なのーーーーーーーっつ!!?) 続く> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/cisvul/pages/7.html
wikiについて ウィキはみんなで気軽にホームページ編集できるツールです。 このページは自由に編集することができます。 メールで送られてきたパスワードを用いてログインすることで、各種変更(サイト名、トップページ、メンバー管理、サイドページ、デザイン、ページ管理、等)することができます ■ 新しいページを作りたい!!ページの下や上に「新規作成」というリンクがあるので、それをクリックしてください。 ■ 表示しているページを編集したい!ページ上の「このページを編集」というリンクや、ページ下の「編集」というリンクを押してください。 ■ ブログサイトの更新情報を自動的に載せたい!!お気に入りのブログのRSSを使っていつでも新しい情報を表示できます。詳しくはこちらをどうぞ。 ■ ニュースサイトの更新情報を自動的に載せたい!!RSSを使うと簡単に情報通になれます、詳しくはこちらをどうぞ。 ■ その他にもいろいろな機能満載!!詳しくは、FAQ・初心者講座@wikiをみてね☆ **分からないことは?@wikiの詳しい使い方はヘルプ・FAQ・初心者講座@wikiをごらんください。メールでのお問い合わせも受け付けております。 ユーザ同士のコミュニケーションにはたすけあい掲示板をご利用ください 番号無しリスト リスト1 リスト2 リスト3 リスト4 リスト5 行頭で - または ・ を指定すると、番号なしリストになります。 番号リスト 番号リスト1 番号リスト1 番号リスト1 定義語 定義語 説明文 行頭を で始め、| 記号で区切ると、定義リストになります。 整形済みテキスト 行頭が半角空白で始まる行は整形済みテキストとなります。行の自動折り返しは行なわれません。 表組み インライン要素 インライン要素 行頭から | でインライン要素を区切ることで表組みになります。 インライン要素のはじめに以下の記述をすることで、表組みのセルの表示を変えることができます。 BGCOLOR(色指定) COLOR(色指定) SIZE(サイズ指定) LEFT CENTER RIGHT 見出し 見出し 行頭で * または * を記述すると、見出しになります。 水平線 行頭で4つの - を書くと水平線になります。 行間開け 改行することで行間をあけることができます。 画像の貼り付け #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (添付ファイル名) #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (ファイルのURL) #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (添付ファイル名) #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (ファイルのURL) 行頭で #ref を記述すると、添付ファイルまたは指定されたURLにあるファイルへのリンクを貼り付けることができます。ファイルが画像ファイルの場合は、その画像を表示します。 行の途中の場合は&ref()を使います。 コメントフォーム1 名前 コメント 行頭で #comment を記述すると、コメントを挿入するためのフォームが埋め込まれます。 設置したページにログが残ります。 コメントフォーム2 名前 コメント すべてのコメントを見る 行頭で #comment_num を記述すると、コメントを挿入するためのフォームが埋め込まれます。 1つのコメントごとにページが作成されます。 引数 size=数字 nsize=数字 num=数字 logpage=ログページ名 above|below nodate コメントフォーム3 名前 コメント すべてのコメントを見る 名前 コメント すべてのコメントを見る 行頭で #comment_num2 を記述すると、コメントを挿入するためのフォームが埋め込まれます。 1つのログページにコメントが記録されます。 コメントフォーム2とは違い、1つのコメントごとにページが作成されません。 引数 size=数字 - コメント入力欄の横の長さ nsize=数字 - 名前入力欄の横の長さ vsize=数字 - コメント入力欄の縦の長さ num=数字 - 一度に表示するコメント数 logpage=ログページ名 - ログページの指定 above|below - 上向き|下向き nodate - 日付を表示しない 投票 選択肢 投票 選択肢1 (0) 選択肢2 (0) ... (0) 行頭で #vote を記述すると、簡易投票フォームが埋め込まれます。 改行 行中に &br() を書くと、そこで改行されます。 カウンタ表示 - - 行中で 30992を記述するとそのページにアクセスした人の数を表示することができます。 30992には次のオプションを指定できます。 - 今日のアクセス数を表示します。 - 昨日のアクセス数を表示します。 リンク @うぃき? 行中で と ? で囲まれた文字列はページへのリンクになります。ページがない場合も自動的にリンクになります。 リンク名? http //から始まるURLを の右側に入力することで外部ページへのリンクになります。 別名内部リンク 別名? 行中のページ名形式の文字列の中で、 で2つの文字列を区切ると別名リンクになります。 の前には別名を、 の後ろにはページ名を記述します。 コメント行 行頭で // を指定すると、コメント行になります。コメント行は出力されない行です。 強調 太文字 シングルクオーテーション×2個で文字列をはさむことで太文字で表示できます。